工場建設を進める上で、堅実な資金計画はプロジェクト成功の鍵となります。工場建設費用の全部、もしくは一部を銀行からの融資で調達する場合や、各自治体が提供する補助金を活用する場合、自己資金だけでは賄えない大規模な投資に対して、最適な資金調達手段を選ぶ必要があります。

しかし、補助金の申請条件や審査期間、さらには金融機関への融資申請時に必要な説明資料の準備など、細部にわたる注意点も多く存在します。

この記事では、工場建設における補助金申請の条件と審査期間、そして工場建設費用のために融資を受ける際の説明資料の整備方法について、具体的なポイントを分かりやすく解説します。

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工場建設における補助金申請の条件と審査期間を確認しよう

工場建設に補助金を活用するためには、まず、工場が立地する自治体が実施している補助金や税制優遇制度の内容を十分に把握することが重要です。

自治体は地域振興や企業誘致を目的として、工場建設、増築、設備投資に対してさまざまな支援策を提供しています。そのため、自社の工場建設計画が、補助金の上限額や新たな雇用創出など、具体的な条件を満たしているかどうかを慎重にチェックする必要があります。

さらに、補助金申請には詳細な審査が行われるため、審査期間が長期にわたるケースが多いことも考慮しなければなりません。工場の建設スケジュールや使用開始予定と補助金の審査期間との整合性を図るため、早期の事前相談と入念な申請準備が欠かせません。

工場建設の補助金については、各自治体の産業振興担当窓口や商工会議所、中小企業診断士、そして補助金申請支援を専門とするコンサルタントなど、補助金に関する知見を持った専門家に相談するとよいでしょう。また、補助金の要件を建物の機能として満たすことが求められるケースもありますので、そのような場合は建築士事務所に早期にご相談されることをお勧めします。

工場建設費用のために融資を受ける場合、金融機関への説明資料を準備する

工場建設費用の全部、もしくは一部を銀行からの融資で調達するためには、まず、融資申請に必要な説明資料の準備が欠かせません。企業が資金調達を行う最も一般的な手段として、金融機関からの融資が挙げられます。融資には、使用目的に応じて設備資金と運転資金があり、工場建設の場合は通常、設備資金としての借入が適用されます。

次に、融資の手続きの流れとして、まず工場建設計画図とそれに基づく工事見積書を用意し、さらに、工場建設後の事業計画書や現在の経営状態を示す決算書など、必要な説明資料を一式まとめて金融機関へ提出します。これらの資料が、工場建設計画の実現性や投資効果を評価するための根拠となります。

金融機関は提出された資料をもとに、工場建設への融資が有効な投資であるかどうか、事業計画の精度を慎重に審査します。投資効果に疑問が生じると判断されれば、融資額の減額や計画の中止に至る可能性もあるため、十分な説明資料の整備と事前準備が極めて重要です。

工場建設における出資の活用は、支配力の希薄化などの検討が求められる

工場建設において、自己資金だけではカバーしきれない大規模な投資を実現するための有力な手段として、「出資」を活用する方法があります。出資とは、事業の成功を期待して外部から資金を提供してもらう仕組みであり、出資者としては個人投資家や他企業が考えられます。

また、出資を受ける際には、利息の支払いに加えて出資額に応じた株式が発行されるケースが多いため、出資者はその株式に基づく議決権を行使でき、会社経営に直接影響を及ぼす可能性がありますので、注意も必要です。

出資を活用することで工場建設資金の一部を効率的に調達できた事例として、ファイトケミカルプロダクツ株式会社(宮城県)があげられます。新工場建設のため外部からの出資を受け、必要な設備投資を実現したことが紹介されています。さらに、大熊ダイヤモンドデバイス株式会社(北海道)株式会社ポテトかいつか(茨城県)の事例では、出資を通じた資金調達と経営支援をうまく組み合わせ、工場建設および増設に成功しています。

工場建設資金に出資を活用する場合、全額を外部からの出資で賄うと発行株式の比率が高くなり、既存の経営者の支配力が希薄になるリスクがあるため、調達金額や株式発行条件については慎重に検討を重ねましょう。

工場建設費の概算見積算出時に予備費を見込み、工事費超過のリスクに備えよう

融資だけでなく、出資や補助金を申請する際も同様ですが、金融機関等に提出する資料は慎重に検討が必要です。特に気をつけるべきは、工事費の見積もりです。

計画がすべて固まっていない段階で、施工会社へ工事費の見積もりを依頼することになるため、概算見積もりにならざるをえません。しかし金融機関からすれば、提出された工事見積額で工場の建設が可能と判断し、融資の可否を審査しています。

もし工事途中での不測の事態により、追加工事費がかかることになっても、金融機関によっては融資額の増額を認めないケースも見られます。よって予備費を概算見積もりに含めるか、それを賄う自己資金を用意しておいたほうが良いでしょう。

工場建設中の生産量維持と資金繰り対策を徹底しよう

工場を新たに建設する場合、会社経営者だけでなく担当従業員も建設プロセスに多くの時間と労力を割くため、本業に専念できる時間が減少し、売上への影響が懸念されます。そのため、労務管理や人員配置の最適化だけでなく、工事期間中のキャッシュフロー管理や資金繰り対策も不可欠となります。

また、工場の増築や建て替えにおいては、既存の生産ラインへの影響が生じることが一般的です。生産量を維持しつつ工事を進めるためには、仮設工場の設置やスケジュール調整など具体的な対策を講じることが求められます。こうした取り組みは、単に生産性を維持するだけでなく、工事期間中の資金繰りを安定させる上でも大きな役割を果たします。

工場建設は大規模な投資であり、工事期間中には予期せぬ費用の発生や一時的な売上の低下など、資金繰りに関するリスクが高まります。したがって、経営者は十分な予備費の確保や現金フローの管理を徹底し、工事期間中の資金繰りをしっかりと見据えた対策を講じる必要があります。これにより、工事期間中も含めた経営の安定と全体のプロジェクト成功を支える基盤を築くことが可能となります。

まとめ:工場建設を成功させるために精度の高い資金計画をつくろう

工場建設という大きな投資をするためには、建物の規模や仕様はもちろんのこと、それを実現するための資金計画が大切です。適切な資金計画を実現するためのポイントは以下の通りです。

  • 工場建設に必要となる資金は、「補助金・助成金」「金融機関からの融資」「出資」などがあげられる
  • 建設費の追加費用の発生や工事期間中の資金繰りなど、不測の事態に対応できる予備費を見込んだ計画にすることでリスクを低減できる
  • 融資や出資、補助金申請に必要な工場建設計画図、工事見積、事業計画書、決算書などの説明資料を整備し、説得力を高めることが重要である
  • 各種資金調達手段の申請や交渉は、工場建設のスケジュールに合わせて早期に開始し、十分な事前準備を行う必要がある
  • 資金調達先との交渉を通じて、最適な調達条件や株式発行の割合、返済条件などを設定し、経営権の希薄化やその他リスクを最小限に抑える工夫が求められる

長沼アーキテクツでは、工場建替を検討する会社や経営者へのサポート実績があります。事業計画を立て、建物計画に落とし込み、それを実現する資金計画までサポートいたします。お問い合わせフォームより、お気軽にご相談ください。

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